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パーソナリティ障害の評価スケール
rating scale of personality disorders
中野明徳
(別府大学大学院教授・臨床心理学専攻)

◆概念と分類

【概念】

 パーソナリティ障害(以下PDとよぶ)の評価スケールは,PDの概念と密接不可分であり,単独で論ずることはできない.わが国の精神科臨床では,米国精神医学会(APA)による診断基準が広く浸透している.その最新版であるDSM-5(2013)では,PDとは「その人が属する文化から期待されるものから著しく偏り,広範でかつ柔軟性がなく,青年期または成人期早期に始まり,長期にわたり変わることなく,苦痛または障害を引き起こす内的体験および行動の持続的様式である」と定義されている.

【分類】

 DSM-5では,診断方式としてディメンション式が検討されたが,結果的にはDSM-Ⅳと同じカテゴリー式になった.診断基準もこれまでと同じ10の特定のPDが定義され,それらは記述的類似性に基づいて3群に分けられる.

 A群は奇妙で風変わりな,猜疑性(妄想性),シゾイド,統合失調型PDを含み,B群は演技的で情緒不安定な,反社会性,境界性,演技性,自己愛性PDを含み,C群は不安や恐怖の強い,回避性,依存性,強迫性のPDを含む.

◆パーソナリティ障害の評価

A.カテゴリー式による評価

 DSM-5ではこれまでと同じ操作的診断基準が採用されているので,「DSM-ⅣにおけるⅡ軸のパーソナリティ障害のための構造化面接」(SCID-Ⅱ)によって,そのまま上記のPDを評価することができる.このSCID-Ⅱには,臨床家の施行に必要な時間を短縮するスクリーニングの道具として,119項目からなる自己記入式「人格質問票」が用意されている.被検者(患者)が人格質問票を記入したあと(通常20分かかる),臨床家はその質問に「はい」と答えた項目に対応するSCID-Ⅱに関してのみ質問すればよい.ただし,この人格質問票には第8学年(中学2年修了)以上の読解レベルが要求される.

 カテゴリー式の診断のために,現象学的にみて,統合失調型と

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