診療支援
治療

パーソナリティ障害と摂食障害
personality disorders and eating disorders
山内常生
(大阪市立大学大学院講師・神経精神医学)
井上幸紀
(大阪市立大学大学院教授・神経精神医学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 摂食障害は,主に神経性やせ症anorexia nervosa(AN),神経性過食症bulimia nervosa(BN),過食性障害binge-eating disorder(BED)の3病型に大別される.強いやせ願望や肥満恐怖といった体重,体型への過度なこだわりや心理的な原因などにより,拒食や過食,嘔吐をはじめとした病的な摂食行動を呈することが特徴である.ANは極端な食事制限とそれによる著しいるいそうを主症状とし,過食と排出行動の有無により,摂食制限型と過食・排出型に分けられる.また,BNは繰り返す過食エピソードと過剰なカロリー摂取を帳消しにするための排出行動や過剰な運動などの代償行動を中心症状とし,不適切な代償行動を呈さないBEDと区別される.

 抑うつ障害や不安障害,強迫性障害,アルコール依存症などほかの精神疾患との合併もよく認められ,患者はさまざまな症状や行動異常を巻き込むことで複雑な臨床像を形作ることが多い.また近年では,好発年齢である思春期から青年期にかけての女性だけでなく,結婚後に摂食障害を発症する例など,より中年期にもその分布を広げ,多様な背景をもつようになった.摂食障害の発症や経過には,患者それぞれのパーソナリティ傾向が根深く影響を与えていることがよく知られており,摂食障害患者の複雑な病態を理解したり治療したりするうえで,パーソナリティ障害併存についての検討は欠かせない.

【併存率】

 摂食障害とパーソナリティ障害の併存率についてのさまざまな報告によると,22-77%が少なくとも1つのパーソナリティ障害と診断され,AN摂食制限型では強迫性,回避性,依存性といったC群パーソナリティ障害が多く,AN過食・排出型では境界性,演技性のB群パーソナリティ障害が多く認められた.また,BNではB群およびC群がともに多く認められた.一方,これをパーソナ

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