診療支援
治療

パーソナリティ障害の入院治療
inpatient treatment of patients with personality disorders
武田龍太郎
(武田病院・院長(神奈川))

◆入院治療の対象となるパーソナリティ障害

 パーソナリティ障害(PD)は,自己愛性・境界性・演技性・回避性などその特性による類型分類が使用され,同時に複数のPDに該当することが多いが,現実検討能力の高さや防衛機制のあり方など,その機能水準は個人によって多様である.入院治療を必要とすることが多いのは,重度のうつ状態や自傷行為・過量服薬・過食嘔吐など衝動行為を生じることが多い境界性PDや自己愛性PDなどの重症PDである.

◆重症パーソナリティ障害の治療

 重症PDは対人関係を安定して保つことに困難を抱え,治療開始後に途中で脱落することが多いために,まずは治療者や治療機関との治療同盟を築き上げることに腐心する必要がある.主治医はこの点に留意しつつ全体の治療をマネジメントする役割をもち,利用可能な種々の治療資源や治療手段を活用することが求められる.そして重要なポイントは,治療の導入の段階から,本人と治療契約を結び,具体的な全体の治療計画を策定し,治療を組織化・構造化していくことである.重症PD障害の治療は,表面化しているうつ状態など症状の軽快や社会的機能の向上を目指すことのほかに,治療者や治療チームとの治療関係における関係性を通じて,未発達なままである他者との情動を交流する能力を促進させることがもう一方の重要な目的であり,治療全体を構造化することでこの目的が達成されやすくなる.

◆入院治療の適応

 入院治療は,医師以外の看護師やコメディカルスタッフなど多職種からなる医療チームが担当し,治療密度が濃くその構造を保ちやすいため,①生命の危険があるとき,②生活の破綻をきたしたとき,③治療継続が困難になったとき,などに選択される.

◆入院時の契約

 本人の治療への主体性が重要であるため,書面や口頭で入院治療目標として,①危機介入,②環境調整などにより現実生活への適応を上げること,③病態の評価,④治療同盟

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?