診療支援
治療

反抗挑発症
oppositional defiant disorder
松本英夫
(東海大学教授・精神科学)

◆疾患概念

【定義】

 DSM-5では秩序破壊的・衝動制御・素行症群に分類されるが,主に行動の制御に問題のある素行症conduct disorder(CD)と,情動の制御に乏しい間欠爆発症との中間に位置づけられると考えられており,行動(口論好きで挑発的態度)と情動(怒り,および易怒性)の両者の制御に問題があることを特徴とする.表1にDSM-5の診断基準を示すが,「怒りっぽく/易怒的な気分」,「口論好き/挑発的行動」,「執念深さ」,で特徴づけられる.軽度の場合には症状は家庭内などの1つの状況に限局される.その場合,定型発達児でも一般的に認められる情緒・行動様式であるため慎重な判断が必要である.

【病態・病因】

 特定の病態や病因が想定されているわけではない.病因には生来の素因も関与しているが,不適切な養育などを含むさまざまな環境的な要因が関与する症例も多く含まれる.多様な病態が考えられるため,心理社会的背景や生育歴を考慮したうえで症状を多角的に評価することが重要である.

【経過・予後】

 発症時期は児童期までであると考えてよい.ほとんどが青年期までに発症するCDに前駆して本症が存在することが多い.一方,本症のほとんどは素行症に移行しない.青年期以後の不安症や抑うつ障害,物質使用障害との関連が指摘されている.注意欠如・多動症attention-deficit/hyperactivity disorder(ADHD)の経過中に本症を併存する頻度が高く,家庭や社会での適応を妨げる要因を形成している.

◆診断のポイント

 軽度の場合には通常の発達のなかで認められうる状態である.そのため診断には子どものおかれている社会・文化的な背景,発達水準,性別,などを考慮したうえで,症状の頻度や強度を評価する必要がある.

◆治療方針

 心理社会的治療が中心である.生育歴から病態を判断し治療に結びつけることが重要であ

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