　DSM-5では性機能不全群は次の10疾患に分類された．①射精遅延，②勃起障害，③女性オルガズム障害，④女性の性的関心・興奮障害，⑤性器-骨盤痛・挿入障害，⑥男性の性欲低下障害，⑦早漏，⑧物質・医薬品誘発性性機能不全，⑨他の特定される性機能不全，⑩特定不能の性機能不全．性嫌悪症が姿を消し，腟けいれんと性交疼痛症が，性器－骨盤痛・挿入障害としてまとめられたのである．さらに下位分類として，それぞれを生来型/獲得型，全般型/状況型のいずれかに分類し，重症度を軽度，中等度，重度と特定することになった．また，①相手の要因，②対人関係の問題，③個人の脆弱性の要因，④文化的・宗教的要因，⑤予後，経過，治療に関連する医学的要因などを考慮するよう求められている.

射精遅延

◆疾患概念

【定義】

　パートナーとの性行為で，6か月以上にわたる射精の遅延もしくは欠如.

【病因】

　加齢，薬剤因性，器質疾患によるものなどがあるが，精神科臨床で重要なのはマスターベーションでは射精できるが，腟内では困難な腟内射精障害である．その病因には，シーツにこすりつけるなど，手指を使わない方法によるものが一番多い．その他の原因を頻度の多い順に挙げると，強すぎるグリップ，側に誰かいるとできない，包茎術後，ピストン運動でない方法などがある．

◆治療方針

　長年にわたる固定した方法によってしか作動しなくなってしまった射精反射を，パートナーとの性交で機能が復活できるように考案したのが「コンドーム・マス法」である．つまり，「コンドーム内側に潤滑剤を垂らして，腟内のヌルヌルした状態に似せて，柔らかいグリップで，ピストン運動で射精に至る」方法である．またTENGA(マスターベーション補助用具)によるマスターベーション練習も有用である．