◆疾患概念
【定義】
従来の「性同一性障害」は,DSM-5において病名が「性別違和」へと変更され,疾患概念にも多少の変更がみられる.「性別違和」とはもともとは,指定されたジェンダーgender(性別)に対するその人の感情的認知的不満足を表す症状用語であったが,診断名としての「性別違和」は,さらに特異的に定義される.
診断名の「性別違和」とは,その人により経験または表出されるジェンダーと,指定されたジェンダーとの間の不一致に伴う苦痛を意味する.「指定されたジェンダー」とは,通常出生時に行われる,婦人科医や助産師によって指定される性別のことである.DSM-5における性別違和では,性同一性障害と異なり,性分化疾患は除外診断の対象とはならない.また,経験また表出されるジェンダーとは,必ずしも反対のジェンダー(男性に対して女性,女性に対して男性)に限らず,「指定されたジェンダーとは異なる別のジェンダー