診療支援
治療

反応性アタッチメント障害
reactive attachment disorder
山下 洋
(九州大学病院特任講師・子どものこころの診療部)

◆疾患概念

 反応性アタッチメント障害の概念は,アタッチメントという乳幼児期の情緒発達と家族の精神保健に関連する広範な理論的・実践的背景をもつ用語を含み,多様な臨床的意義をもつ.政治的な孤児など重篤な剥奪後の子どもへの社会的介入から得られたエビデンスに基づき,DSM-5では大幅な改訂がなされ臨床実践において実用的な明確な記述が加えられた.ここではDSM-5で用いられる反応性アタッチメント障害(RAD)および脱抑制型対人交流障害disinhibited social engagement disorder(DSED)を中心に述べる.

【定義・病型】

 RADおよびDSEDの発症要因は病理的な養育である.5歳以前の乳幼児期に子どもが病理的な養育状況におかれ,安楽や刺激,愛情などの基本的な情緒的ニーズに応えられないこと(心理的・身体的虐待と社会的ネグレクト)が持続するか,主な養育者と安定したアタッチメントを築く機会が与えられないこと(劣悪な施設処遇,養育者の頻回な変更など)に引き続き,子どもに対人交流と情動の障害が生じたことで診断される.

 RADとDSEDは,アタッチメント障害の2つの下位分類として位置づけられていたが,発症要因は共通していても症候学,関連要因や治療的介入への反応性が異なることからDSM-5ではストレス関連障害のなかの独立した診断カテゴリーとなった.

 RADには,苦痛なときに養育者に安楽を求め,提供される慰めに反応するという選択的なアタッチメント行動の抑制を中心に多様な臨床像が含まれる.他者との対人交流は最小限で養育者に対する接近と回避または慰め行動への抵抗が混合した態度,過覚醒と過敏さや凍り付いたような凝視を示す.情動面の特徴として,陽性の感情は抑制され悲しげで情緒的応答性を欠き,子ども自身や他者の苦痛に対する反応が攻撃的になることもある.DSEDの中心的な行動パター

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