診療支援
治療

感応性妄想性障害
induced delusional disorder
日野原圭
(慈政会小柳病院(茨城))
加藤 敏
(小山富士見台病院・院長(栃木))

◆疾患概念

【定義・病型】

 感応性妄想性障害は2人,時に数人の人々によって妄想や言動が共有される事象を指し,従来,感応精神病,あるいは二人組精神病(folie à deux)といわれたものに相当する.

 最初に妄想を確信した者を発端者(感応者)といい,その人に影響を受けて同じ妄想を分かちもつ者を継発者(被感応者)という.狭義の感応精神病を「憑依感応型」と「妄想感応型」に分けた分類(吉野,1978)が知られる.ICD-10では「F24感応性妄想性障害」に分類される.DSM-Ⅳでは「297.3共有精神病性障害」の項があったがDSM-5では削除され,「297.1妄想性障害」などに分類される.Francesも指摘しているように,この臨床単位は独自な臨床的な意義を有し捨てがたい.治療においても特別な対応が要請され,単なる妄想性障害とは一線を画す.そこで,適切と思われるときにはICDコードを用いることが推奨される.

【病態・病因】

 感応性妄想性障害は発端者と継発者がもともと心理的な結びつきが強く(例えば夫婦),周囲から孤立するなかで生じ,2人の場合が多いが,数人に及ぶこともある.共有される妄想内容は,かつては狐憑きなど憑依感応型が多かったが,時代変遷により被害妄想など妄想感応型が増加している.診断的には,発端者には統合失調症妄想型や妄想性障害が,継発者には妄想性障害や短期精神病性障害が多い.

【疫学】

 Kaplanによれば,この障害はおそらくまれなものであるが,発生率と有病率は不明であり,これに関する文献も,ほぼすべてが完全な症例報告の形をとっている.

【経過・予後】

 本症には発端者の発症の時点と,継発者の感応が始まる時点がある.

 2つの時点は普通長い前駆期をもって隔たっていることが多く,発端者の異常性が緩慢に起こってくることは感応性精神障害の発生において重要である.柏瀬(1977)は発端者の異

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