◆疾患概念
【定義・病型】
神経性過食症(BN)では,自制不可能な過食エピソードが繰り返される.本人の自己評価は体重や体型によって大きな影響を受けるため,過食して体重が増えることをおそれ,それを防ぐような代償行動が過食後にみられる.このため,BNでは体重は標準内であるが変動が激しい.
代償行動のパターンによって,DSM-ⅣではBNは2つの病型に分けられていた.1つは自己誘発性嘔吐や下剤乱用などによる排出型で,もう1つは運動や不食による非排出型である.
しかし,DSM-5ではこの2つの下位分類はなくなっている.また,BNと同様な過食を認めるが代償行動を伴わない患者は,新たに設けられた過食性障害binge-eating disorder(BED)に入れられる.
【病態・病因】
過食エピソードでは,大量の食物を一定の時間(例えば2時間以内)に一気に詰め込んでしまう.過食される食物は,カロリーの高い,炭水化物が中心となることが多い.いったん食べ出すと頭の中が真っ白になって止めることができないという感覚を伴う.
身体症状としては,う歯,耳下腺の腫脹,指の胼胝,低カリウム血症などであり,必ずしも無月経ではないが月経は不規則である.精神症状としては,しばしば抑うつ気分が認められ,手首自傷や大量服薬がみられることがある.また,万引き,アルコール乱用,薬物乱用,家庭内暴力,性的乱脈などがみられる.
摂食障害はストレスを適切に処理する能力が未熟なため発症する心身症の1つである.BNは,1980年代後半より増加してきたが,その原因として,コンビニエンスストアなどの増加による食物確保のしやすさや,現代青年の欲求不満耐性の低さによる神経性やせ症anorexia nervosa(AN)(→)の摂食制限型からBNへの病型変化の起こりやすさが挙げられる.
【疫学】
主に女性で,思春期から青年期にかけて発症する.