診療支援
治療

摂食障害における認知行動療法
cognitive behavioral therapy in eating disorder
切池信夫
(大阪市立大学名誉教授)

 神経性やせ症anorexia nervosa(AN)()や神経性過食症bulimia nervosa(BN)()などの摂食障害の治療目標は,食行動と体重の正常化と安定,身体合併症の改善,摂食障害の中心にある不適応的思考や行動の正常化と再発予防である.このなかで,認知行動療法は,食行動異常とその中核にある精神病理(すなわち体重や体形のコントロールにより自己評価を高める)を扱う.まず患者の行動変化を援助し,自らその変化の効果と意味を吟味する過程で,認知の変化を促していく.ここでは,Fairburn博士が摂食障害の治療に認知行動療法を導入して,約30年間にわたる試行錯誤の果てにたどり着いた改良版Cognitive Behavioral Therapy-Enhancement(CBT-E)について紹介する.

◆治療を始めるにあたり

 治療を始めるにあたり,まず患者との間に信頼関係を築く必要がある.そのために治療者はこの病気について知っており,患者に対して温かい関心をもち,親と共謀しているという印象を与えない配慮が必要である.

 次にパンフレットなどを用いて病気についての正しい知識と理解を得させる.そして病気による得失を考えてもらい,失っているものの多いことに気づかせ,治療への動機づけをはかる.この動機づけの程度は,その後の治療過程において絶えず揺れ動くので,この強化と維持に努める.

◆治療の適応

 この認知行動療法の適応となる患者は,①外来治療で行える,②身体的に安定,自殺の危険性がない,③BMIが15-40,とされている.そして禁忌は,①重篤な身体合併症,②自殺の危険性,③重いうつ病,④持続的な物質誤用や乱用,⑤人生上の大きな出来事や危機,⑥治療に参加できない,などである.

◆治療構造

 この治療法は個人精神療法の形で行う.そして治療者に対する信頼関係を基盤として,患者と治療者が異常な食

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