◆摂食障害への精神療法とは
精神分析的には,摂食障害の病理は,パーソナリティの発達のなかで最早期に起きる「取り入れ」に深く由来する.ヒトの発達にとって取り入れの始まりは,胎生期における臍帯を通じての養分の供給であり,口腔を介する羊水の飲み込みである.それは出生という環境の劇的な変化によって,肺への大気の取り込みと,消化管への母乳の取り入れへと代わる.重要なのは,その際に母性(母親,養育者)への愛着,対象希求という心的力動にも変化が起きることである.つまり,出生後は母親,乳房(乳首)といった具体的な対象が出現することで,胎内環境では母体ストレスとして感受されるにとどまっていた対象の不在を経験し,その不在の経験は不安や抑うつといった自己にとっての心的なストレスをもたらすようになる.心的ストレスの自覚は,対象への希求とともに力動を生みだす.
その後の発達では,身体的な成長と並行して積み重ねられる