診療支援
治療

重症摂食障害患者の身体管理・入院治療
inpatient treatment for severe anorexic patient
永田利彦
(なんば・ながたメンタルクリニック・院長(大阪))

 摂食障害患者がなぜ摂食障害という絶望的な行いを始め,それを継続するかは,そうするしかない理由がある.治療が困難であるのは,別に故意に隠しているわけではないが,患者自らがその理由をなかなか語らないからである.治療終結が間近になって,誰にとっても公然となった時期に初めて,なぜなのか自ら語られるものである.反対にいえば,いかに早く語ってもらうかが重要である.それには,別に入院治療の必要はないはずである.しかし,肥満恐怖へのとらわればかりが強調され,どんどんと低体重が進むとき,それを医療によって取り除いてほしいという強い要望があるときに,医療者として接していると,内心,どれほどの治療効果があるのかといぶかしみながら入院治療を引き受けることになる.食べているのに太らないと,患者だけでなく両親も真顔で話すこともまれではなく,治療は難渋する.

 摂食障害の病理の変化も悩ましい.もう,ただただ厳しい摂食制限だけの,断食を行う修行僧のような摂食障害患者は減った.自己主張できないための現実社会の苦しさからの逃避であったり,気分の上下の大きさを自分でコントロール不能であったり,古典的な摂食障害の病理とは異なる.

 それでも,入院期間の制限がないときには,まずは入院治療を引き受け,入院という本人が容易にごまかせない環境の中で,年単位の時間をかけ本人と向き合い,徐々に摂食障害症状という鎧甲のような頑丈な隠れ蓑に隠れる理由(病理)を明らかにしていくことが可能であった.ところが最近の医療情勢で入院期間の短縮が不可避となり,数か月以内の退院が求められている.大学病院勤務の時代から何をするにも短すぎる.

 そこで筆者自身は,ほとんどすべての患者を外来治療で診療している.毎月数十人,さらに月に数人は体重30kgを切るような通常なら即入院の新患も来院するが,この数年で入院治療を実際に依頼したことはない.常に行動療法

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