◆疾患概念
【定義・病型】
知的発達の遅れと適応機能の障害が発達期から認められる状態で,古くは精神薄弱,その後は精神遅滞という用語が使われてきたが,近年,教育や福祉の領域では知的障害の用語が定着している.医学の領域でもDSM-5の改訂に伴い,知的能力障害intellectual disabilities(ID)と名称変更され神経発達症群のなかに位置づけられた.ICD-11で検討中の知的発達障害intellectual developmental disordersと同義であるとされている.知的障害の定義は従来と同様で,「発達期に生じ,知的機能が平均よりも有意に低く,かつ適応機能の障害が明白である」というものである.具体的には,標準化された個別的知能検査で平均より有意に低い状態にとどまっており(一般的には田中-ビネーV検査,WISC-ⅢまたはⅣ検査でIQ値が70以下),かつ概念的領域,社会的領