診療支援
治療

限局性学習症
specific learning disorder
小平雅基
(総合母子保健センター愛育クリニック・小児精神保健科・部長(東京))

◆疾患概念

【定義・病型】

 知的水準は正常域にあり,社会文化的な機会も与えられながら,一般的な教育では,読み書き能力や計算能力といった学習能力に困難を認める場合に,限局性学習症と診断されうる.限局性学習症の背景には伝統的なディスレクシア概念が存在しており,単に勉強ができないという学習困難learning difficultiesとは区別している.そのために,改めて“specific(特異な)”と表現されている.典型的かつ特異的な学習困難としては,ディスレクシア(読字障害)以外にも,ディスカルキュリア(計算障害),ディスグラフィア(書字障害)がある.ディスレクシアに関しては,読みに問題があると,書きにも問題を呈することが多いため,“読み書き障害”とすべきとの意見もある.

 DSM-5では神経発達症群(DSM-5)の1つに分類されている.DSM-5における診断の柱は,「学習することの持続的困難さが存在していること」「成績がその年齢より十分に低いこと」「(多くの場合)幼少からその特徴を認めること」「その困難が他の障害(知的能力障害や,視覚障害,聴覚障害,あるいは情緒障害)によるものではないこと」となっている.

【病態・病因】

 中枢神経における認知機能障害が基盤に存在していると考えられており,多くの場合は生来的な要因で,遺伝性もあると理解されている.

 読み書きの能力だけに絞ってみても,「読む」「聴く」という言語入力に始まり,「書く」「話す」という出力に至るまで,「感覚処理」「作動記憶」「情報分析」「単語の意味の辞書の利用」「文字や音韻の再生」「運動器官への指令」といったさまざまな中枢機能を用いることとなる.その各機能の障害や混乱により,読み書き能力は十分に発揮できないこととなる.

【疫学】

 調査によってかなり幅のある結果となっているが,読字,書字,算数の学習領域にわたる限局性学習症の有病率

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