診療支援
治療

不登校,ひきこもり
school absentee, social withdrawal
近藤直司
(大正大学心理社会学部臨床心理学科教授)

◆疾患概念

【定義・病型】

 文部科学省は,不登校を「何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし,病気や経済的理由による者を除く)」と定義している.また,ひきこもりについては,厚生労働省による「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」(以下,ガイドライン)において,「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である」とされ,「なお,ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが,実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである」というただし書きが付記されている.

【病態・病因】

 不登校,ひきこもりのいずれも,精神疾患や発達障害などの生物学的要因,不安感,恐怖感,抑うつ感,回避などの心理的要因,友人関係や教師との関係,家族状況,文化・経済・社会状況などの社会的要因が関連しているものと考えられる.これらの諸要因のうち,ある特定の要因が深く関与している場合,あるいはそれぞれの要因が複雑に関連し合っている場合もあり,その組み合わせや関与の程度は個々のケースによって異なる.

【疫学】

 文部科学省「平成21年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によれば,小学校における平成21(2009)年度の不登校児童は22,327人で,全児童数の0.32%に相当する.また,中学校では100,105人(2.77%),高等学校では51,726人(1.55%)が不登校の状態にある.

 ひきこもりに関する疫学調査と

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