診療支援
治療

児童・青年期の嗜癖性障害
addictive disorder in children and adolescents
松本俊彦
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・薬物依存研究部部長)

◆疾患概念

 嗜癖性障害とは,嗜癖行動,つまり,「行動の依存症」のことである.代表的な嗜癖行動としてギャンブルやゲーム,買い物,性的行動などがあるが,児童・青年期に多くみられるのはインターネットを介したゲーム(オンラインゲーム)である.

 嗜癖行動には4つの特徴がある.第1に,その行動に先だって緊張感や焦燥感の増大がみられ,その行動をすることによってすみやかに高揚感や解放感といった好ましい気分の変化がもたらされ,これが報酬となって本人にその行動を反復させる.なかには,ある限定されたコミュニティからの承認が一種の報酬として機能している場合もある.第2に,その行動を繰り返す過程で,当初と同じ気分の変化を得るために必要な行動の強度や頻度(費やす時間や金額)が増大する.第3に,その行動をやめようとすると,焦燥感のような不快気分に襲われ,その苦痛を回避するためにその行動を繰り返す必要がある.そして最後に,その行動を自分の意思ではコントロールできない,あるいは,その行動に自分がコントロールされているという感覚がある.

 このように嗜癖行動には,渇望や耐性,離脱という点で物質依存と共通した特徴があるが,相違点もある.つまり,精神作用物質の場合,それ自体に依存性があり,動物モデルで再現可能であるが,嗜癖行動の場合,その行動がもつ依存性は個体の素因や状況によって異なり,動物モデルによる再現は容易ではない.

 逆にいえば,ある特定の行動が報酬として機能するかどうかは,本人が抱える個別的要因に影響されると考えられる.例えば,感情的苦痛や困難な現実的状況に直面している者では,ある行動への没頭が意識を紛らして苦痛を緩和したり,あるいは,承認欲求や空想的万能感を満たして自尊心を一時的に高めたりすることがある.その場合には,そのような効果が報酬として機能し,行動を反復させる動因となりうる.

◆診断のポイント

 診断

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