診療支援
治療

認知症の家族ケア
support (care) for family caregiver of dementia patients
藤本直規
(藤本クリニック・理事長(滋賀))
奥村典子
(藤本クリニックデイサービスセンター・所長(滋賀))

◆家族ケアの実情

 介護家族への支援は,認知症の人への支援とともに,認知症医療が担うべき重要な役割である.ところで,認知症医療の枠組みは変わってきていて,国が推進している「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を受けた“認知症相談医”,国立長寿医療センターの研修を受けた“認知症サポート医”など,かかりつけ医が認知症患者の最初の受け皿としてだけでなく,家族ケアも含めて,診断後の支援でも重要な役割を担うように位置づけられるようになった.一方,「もの忘れ外来」は,大学病院・総合病院・精神科単科病院だけではなくて,診療所などにも広がっており,都道府県などにより認知症専門医療の提供と地域連携の中核機関として指定を受けた認知症疾患医療センターに,2014(平成26)年度から,新たな類型として診療所型の指定が加わった.このように,医療環境の変化により,認知症医療の診断後のかかわり方も,薬物治療,非薬物治療としての認知症ケアの場の提供,家族支援,地域連携など多岐にわたってきている.また,認知症の家族ケアにおいては,認知症の本人に対する適切な介入も,家族の負担の軽減という意味で大切である.そのような状況のなかで,家族ケアの方法を共有するとともに,その地域の事情に応じて,専門医療機関間,あるいは,専門医と相談医・サポート医間で役割分担がはかられねばならない.

 次に,筆者らのもの忘れクリニックで行っている家族ケアの実際を紹介する.

◆家族ケアの実際

A.予約時の受診前相談

 家族が予約電話のついでに,スムーズな受診方法,症状への対応方法,家族間の問題への解決方法などについて尋ねてきた場合は,可能な限り丁寧に答えておく.必要に応じて,緊急受診の手配,地域包括支援センターへの連絡,介護保険サービスの緊急利用へつなげることもある.また,強い介護負担を訴えるときには,支持療法的に介護者への肯定的な評価を伝えることが

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