◆非薬物療法の概念
認知症性疾患に対する治療は,薬物療法と非薬物療法に大別される.現状では,この両者に加えて家族介護者への支援が相互に作用し合うことによって,いくばくかの治療効果が得られているのではないかと考えられる.
非薬物療法は,BPSDの軽減を主ターゲットとして導入される.認知機能の活性化も期待されており,その人なりに保持されている能力を発揮しながら暮らせる可能性を高める.併せて,介護者との関係性の再構築や介護負担の軽減につながることもある.
具体的な療法としては,主に,記憶の訓練や日常生活動作を中心とするリハビリテーション,リアリティ・オリエンテーション(RO)のほか,美術療法,音楽療法(→),回想法,アニマルセラピー,認知的リハビリテーション,バリデーション療法などが挙げられる.それぞれに成り立ちは異なり,必ずしも認知症のための治療法として開始されたものばかりではないが,各療法の特徴を生かして,認知症性疾患患者に積極的に導入されるに至っている.現時点では,記憶の訓練やリハビリテーションをはじめとして,RO,音楽療法の実証性がおおむね認められ,推奨度の高い段階にある.しかし,その他の療法については,さらなるエビデンスの蓄積が期待されているところである.また,日常生活における個々に応じたかかわりも,重要な非薬物的介入であることを忘れてはならない.
非薬物療法の有用性を高めるには,標的とする症状に合う療法を行う必要がある.米国精神医学会の治療ガイドラインでは,アルツハイマー病(AD)と認知症のための非薬物療法は,行動,感情,認知,刺激に焦点を当てたアプローチとして分類されている.
認知症によるさまざまな症状を改善するために有効な介入方法はその対象により異なり,その高齢者のどのような状態が改善されればその人なりに過ごしやすいのかを考える必要がある.また,介入方法の種類を問