◆疾患概念
【定義・病型】
本項では,30歳までに発病した統合失調症(ICD-10による)で60歳以上において筆者が治療にかかわった事例の経験から,その治療法について解説する.
【病態・病因】
統合失調症はLiebermannの経過図(図1)図に示されるように病前期,前兆期,極期,安定期(再発期)の自然経過が一般的に理解されている.これは10代ないし20代の発病とその後の60歳までの経過図である.しかし最近は高齢化に伴い,この図に示されない60代以後の患者が増える傾向にある.大森は「統合失調症の長期にわたる観察からは,その長期経過のある時点からその欠陥像が変化して再び適応性,接触の改善を示している例が多い.病態が安定化し,行動の面でもまとまりのみられる変化は,60歳以前,患者の精神身体の老化がいまだ出現していない統合失調症においてしばしば認められる現象である.したがって統合失調症には固有の安定静穏化の出現が認められ,老人性の変化はその安定化している例にも,またいまだ安定平穏化に至らない例にも,統合失調症病像をさらに平板化し,穏和化し,対人関係の障害を減弱させる作用を有している」と言う(大森健一:統合失調症の高齢化.臨床精神医学37:589-593,2008).
【疫学】
筆者の治療経験から,その60代以後の症例の状況を次に示す.筆者が1991年に開業して以来クリニックでかかわった統合失調症患者は1,257人で,30歳までに発病し,60歳以後もかかわった151人の2014年末の状況を表1図,表2図に示した.
【経過・予後】
これらの患者群から次のようにいえる.死亡原因は癌疾患が主で,死亡年齢の平均は男性72.4歳,女性70.2歳である.転院やその後の不明を除き,現在治療中の患者は男性28人,女性53人である.その生活の状態は単身生活者15人,家族と生活51人,施設に入所中15人である
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