診療支援
治療

進行性皮質下膠症
progressive subcortical gliosis
古川迪子
(東京医科歯科大学大学院・脳神経病態学分野(神経内科))
三條伸夫
(東京医科歯科大学大学院特任教授・脳神経病態学分野(神経内科))

◆疾患概念

【定義・歴史】

 本症は進行性の認知症を呈し,病理学的に大脳皮質や皮質下領域で広範に線維性グリオーシスやアストロサイトの増生を呈する慢性進行性の脳変性疾患である.

 本症は1949年にNeumannらにより病理学的に従来のピック病とは異なる病理像を呈した3例をPick disease, typeⅡとして,最初に報告された.1967年にNeumannとCohnらがさらに大脳白質・基底核・視床・脳幹・脊髄後角にグリオーシスを伴うがアルツハイマー病やピック病とは異なる4例の追加報告を行い,primary subcortical gliosisまたはprogressive subcortical gliosisとよぶことを提唱し,現在では後者の名称が主に用いられている.

【病態】

 臨床像は前頭側頭型認知症と類似しており,進行性の認知症と性格変化を主症状とする.早期より発動性減退,無関心,易怒性などの人格・感情変化や注意力散漫・判断力の低下を認め,5-15年の経過で,幻視・幻聴や妄想,抑うつ状態などの精神症状や記憶障害・見当識障害が出現する.なかには常同・反響言語やさまざまな失認・失行症状を認める症例も存在する.筋固縮や安静時振戦などのパーキンソニズムに眼球運動障害を伴い進行性核上性麻痺と臨床診断され,剖検によって本症と診断された症例の報告も存在する.症状は進行性であり末期には重度の認知症や人格荒廃,無動状態となり,嚥下障害や錐体外路徴候,尿失禁などの神経症状を呈する.

【疫学】

 本症の有病率は不明であるが,非常にまれである.性差はないといわれ,発症年齢は50-60歳代が多いが,30歳代の若年発症例や80歳代の高齢発症例も報告されている.

 大部分は孤発例であるが,家族性も存在し,1994年にLanskaらが2家系の家族性進行性皮質下膠症について報告し,常染色体優性遺伝形式で遺伝しう

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