【定義・病型】
初老期に人格変化(人格水準の低下),行動障害(行動抑制の減退,常同行動),言語障害〔自発語の減少(進行性非流暢性失語progressive non-fluent aphasia)から無言状態に至る〕を特徴とする緩徐進行性の認知症で発症し,発症して1-2年以内に運動ニューロン疾患(主として脊髄性進行性筋萎縮症,時に筋萎縮性側索硬化症)が併発する前頭側頭型認知症の一型Frontotemporal Lobar Degeneration with Motor Neuron Disease(FTLD-MND)である.
【病態・病因】
原因は不明である.前頭側頭葉のセロトニン系の機能低下が考えられている.前頭側頭葉と海馬歯状回の神経細胞内にユビキチン陽性,TDP-43陽性,タウ陰性の蛋白が沈着することと運動ニューロンの障害(舌下神経核,脊髄前角細胞の脱落とBunina小体の存在)が特徴とされる.重金属,中毒,感染,外傷,老化,Cu/Zn SOD遺伝子などとの関連はみられていない.
【疫学】
初老期(平均年齢57.2歳)に好発し,男性は女性の1.7倍で男性に多い傾向がある.わが国での報告例が最も多い.地域性や家族例の報告はない.発生率は,筋萎縮性側索硬化症よりも低く,筆者の経験からの推定は0.1-0.2/10万である.
【経過・予後】
緩徐進行性である.認知症が先行する症例が多いが,運動ニューロン疾患が先行することもある.運動ニューロン疾患としての球麻痺症状の発現から誤嚥性肺炎を併発しやすくなる.呼吸障害を併発して全経過は2-5年(平均2.5年)である.
◆診断のポイント
形態画像で前頭側頭葉の萎縮と機能画像では脳血流シンチやFDG-PETの所見(前頭側頭葉に選択的血流低下・代謝の低下)が特徴的であり,特に機能画像が早期診断に役立つ.
◆治療方針
本症に対する根本的治療はない.神経
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