診療支援
治療

細菌性・真菌性感染症
bacterial and fungal infection
町田 明
(土浦協同病院・神経内科)
横田隆徳
(東京医科歯科大学大学院教授・脳神経病態学分野(神経内科))

細菌性髄膜炎

◆疾患概念

【定義・病型・病態・病因】

 細菌性髄膜炎は細菌によって起こる髄膜の細菌感染症による炎症である.細菌性髄膜炎は化膿性の中枢神経系感染症で最も多いものであり,わが国での年間発症数は約1,500人に上る.起炎菌としては市中髄膜炎のなかでは肺炎球菌が最も多く,それに次いで髄膜炎菌,B群レンサ球菌,インフルエンザ菌,そしてリステリア菌とされている.また患者年齢により起炎菌の違いがあり,3か月未満の乳児での髄膜炎では大腸菌とB群レンサ球菌が主体であり,4か月-5歳までの乳幼児ではインフルエンザ菌と肺炎球菌が多く,成人ではその多くが肺炎球菌とインフルエンザ菌である.わが国においてもインフルエンザ菌b型(Hib)・肺炎球菌ワクチンの普及により2011年以降,Hibおよび肺炎球菌による髄膜炎の割合は減少しつつある.

 典型的な症状と徴候は,発熱,頭痛,嘔吐,羞明,項部硬直,傾眠,錯乱,昏睡である.発熱,項部硬直,意識障害を髄膜炎の三徴というが,これら三徴が全てそろうのは髄膜炎患者全体の2/3以下とされている.1秒間に2-3回頭部を水平回旋させたときに頭痛の増悪がみられるJolt Accentuation of the headacheは髄膜炎において感度97%,特異度60%とされ,項部硬直やケルニッヒ徴候,ブルジンスキー徴候とともに参考になる.

【経過・予後】

 細菌性感染症のなかでも最も重篤な感染症の1つであり,抗菌薬の進歩にもかかわらず死亡率や後遺症の割合が高く,転帰が初期治療に左右されることから,neurological emergencyに位置づけられる.早期診断と早期治療が重要であり,2007(平成19)年に日本神経治療学会,日本神経学会,日本神経感染症学会の3学会共同による細菌性髄膜炎の診療ガイドラインが発表され,現在では,「細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014」

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