診療支援
治療

ホルモン剤による精神症状
mental disorder induced by hormone drugs
井上雅之
(三井記念病院・精神科(東京))
中嶋義文
(三井記念病院・精神科部長(東京))

◆疾患概念

 中枢神経系に影響を与えるホルモン剤として,副腎皮質ステロイド,女性ホルモン製剤が挙げられる.特に副腎皮質ステロイドは内科疾患で幅広く適応があり,精神症状に出くわす場面も多いと思われる.婦人科領域でも,子宮内膜症の治療薬として第一選択で使用されることの多い第四世代の黄体ホルモン類似物質ジエノゲストが抑うつを引き起こすことが知られており,うつ病患者が治療を受ける場合には細心の注意を払う必要がある.

A.副腎皮質ステロイド

 1940年代後半以降にステロイドは,さまざまな疾患に用いられている.その効果は誰もが認めるところであるが,副作用も多岐にわたる.中枢神経系の副作用としては,一番頻度が高いのはうつ病(うつ状態,適応障害を含む)で4割近いとされる.次に躁病(躁状態,躁うつ混合状態を含む)で3割,そして2割にせん妄,幻覚妄想などの統合失調症様症状を呈するものが1割程度認められる.精神症状は早い患者ではステロイド投与初日から,遅い患者では3か月以降という報告があるが,多くは投与後3-14日の間に出現する.ステロイド投与量と精神症状の出現に大きな相関関係は認められないが,投与量が40mg/日のパルス療法などで何らかの精神症状が出やすいとされる.せん妄の場合は5mg/日を超えると生じやすいという報告がある.

1.治療方法

 副腎皮質ステロイド誘発性の精神症状の場合,薬剤を漸減中止すれば軽快することが大半である.ただしステロイドを使用しなければならないような身体疾患の場合は減薬が困難なケースも多く,減薬により身体疾患が増悪するリスクも高いため,基本的にはバランス調整ということになる.

a.うつ状態

 副作用の少ない選択的セロトニン再取り込み阻害薬やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬などが使われる.

[処方例]


レクサプロ錠(10mg) 1回1錠 1日1回 夕食後


b.躁状態

 躁状

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