診療支援
治療

時差症候群や交代勤務による概日リズム睡眠障害
circadian rhythm sleep disorder
佐々木三男
(太田総合病院睡眠科学センター(神奈川))

時差型(時差障害)

◆疾患概念

【定義・病型】

 概日リズム睡眠障害,時差型は,時差による生活時間と体内リズムの急激なずれにより生じる睡眠・覚醒障害で,睡眠の乱れ,不眠,日中の過眠,精神作業能力低下,疲労感,食欲低下などが生じる.症状の重症度は,通過した時間帯域の数と移動方向によって異なる.東回りの移動のほうが西回りよりも調節が難しい.

【発症・経過】

 時差による睡眠障害は一過性である.症状は時間帯域を2つ以上の飛行後1-2日で始まり,一定の経過をたどる.症状の重症度と持続期間は,移動した時間帯域数と移動方向により異なる.概日リズムが現地時間に同調されるのは,時差1時間帯当たり1日かかると推定されているが個人差も大きい.しかも時間帯域を6つ以上移動すると,概日リズムが飛行の移動方向と逆方向に移行して同調することがある(逆行性同調).この際は時差症状の持続期間が長期化することもある.

【睡眠ポリグラフ】

 時差地での睡眠ポリグラフ検査所見は,日本から時差7時間の米国西海岸への東行飛行では,現地で睡眠の短縮化,分断,睡眠前半のレム睡眠減少などが認められる.

◆診断のポイント

 表1に診断基準を示す.時差症状群の時差症状は一過性であり,その地に滞在しているうちに現地の生活時間に適応していく.しかし,時差のある地域を頻繁に往復する人々は,慢性の時差症候群に悩まされ,さまざまな心身の疾患を併発することもある.時差による生体リズムの乱れとそれによって引き起こされる二次的な障害が持病を悪化させ,心身症や精神障害の引き金となることもある.

 以上の所見は,発生率はきわめて少ないにしても,精神障害を既往にもつ人の海外旅行では,服薬中の場合には服薬を続けて旅行するように勧めることが望ましい.

◆治療方針

A.治療方針の概要

 時差症状解消対策の基本的な戦略としては,①ずれたリズムを早く現地時間にリセットさせること,

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