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睡眠相前進症候群(概日リズム睡眠-覚醒障害群・睡眠相前進型)
advanced sleep phase syndrome (Circadian rhythm sleep-wake disorder, advanced sleep phase type)
三島和夫
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・精神生理研究部部長)

◆疾患概念

【定義・病型】

 睡眠相前進症候群は,睡眠障害国際分類(ICSD第3版)およびDSM-5ではそれぞれ概日リズム睡眠-覚醒障害群に属する睡眠・覚醒相前進障害および睡眠相前進型と疾患名が変更された.本稿では後者を用いる.概日リズム睡眠-覚醒障害の原因は,生物時計自体の機能障害(周期異常や同調不全などの内因)か,生物時計位相に合致しない時間帯で人為的に睡眠をとらなくてはならない心理社会的理由(時差や交代勤務などの外因)に二大別される.いずれの場合も,望ましい時間帯に眠る(覚醒する)ことができないことから,不眠や過眠,自律神経症状などの身体的不調を呈するようになる.

 睡眠相前進型は睡眠時間帯が著しく早い時間帯で固定し,努力しても望ましい(より遅い)時刻に入眠・覚醒できない病態を指す.診断基準には具体的な時刻は定義されていないが,これまでに報告された定型例では夕方以降の比較的早い時刻から眠気を生じ,午後8時前には入眠し午前2時過ぎには覚醒するなど,睡眠時間帯が著しく前進するのが特徴である.不眠症などとは異なり,自由に睡眠時間帯を選択できる場合には入眠・覚醒時刻は規則的であり,睡眠の質(睡眠ポリグラフィ上での睡眠構築)や睡眠時間にも特段の異常は認められない.しかし,通常生活では出勤や登校などの社会的制約から睡眠習慣を維持するのに困難が生じ,生活の質が大きく低下することが多い.高齢者にみられる早寝早起き型の睡眠習慣は,生物時計機能の加齢変化に基づく生理的変化であり,その症状が本人の強い苦痛や著しいQOLの低下を招かない限り狭義には本症に含めないのが一般的である.

【病態・病因】

 常染色体優性遺伝形式のメンデル発症をする睡眠相前進型家系が知られており,罹患患者の概日リズム周期(フリーラン周期)が短いことが報告されている.米国の大規模家系の分子遺伝学的解析からPer2遺伝子内のカゼイン

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