診療支援
治療

非24時間睡眠覚醒症候群
non-24-hour sleep-wake disorder
海老澤尚
(和楽会横浜クリニック・院長)

◆疾患概念

【定義・病型】

 非24時間睡眠覚醒症候群は,睡眠覚醒リズムを望ましい生活スケジュール(あるいは24時間周期の昼夜リズム)に合わせることができず,入眠時刻と覚醒時刻が徐々にずれる(多くは日に1-2時間程度ずつ遅れる)ため,夜間の不眠と日中の過剰な眠気(または日中の覚醒困難)・注意集中困難・不定身体愁訴などが周期的に出現し,仕事や学業などの社会生活に支障をきたす疾患である(図1).盲目の人に多いが,視覚健常者でもまれに発症する.

【病態・病因】

 睡眠は,恒常性維持機構(覚醒が続くと疲労が蓄積して睡眠欲求が高まり,眠ると睡眠欲求が低下する)と,体内時計の働き〔24時間周期で睡眠傾向(眠りやすさ)の上下を繰り返す〕の相互作用で生じると考えられている.体内時計の中枢は視床下部の視交叉上核に存在し,ほぼ24時間周期のリズム(概日リズム)を生み出す.概日リズム本来の周期は24時間よりやや長い場合が多いが,朝に光刺激を受けてリセットされることで24時間の昼夜リズムに同調して(合わせて)いる.

 良好な睡眠をとるには,睡眠覚醒リズムが望ましい生活スケジュール(あるいは昼夜リズム)と一致している必要がある.一致しない場合,適切な時刻に眠れなかったり,不適切な時刻に眠気・居眠りを生じたりする.

 盲目の人の睡眠覚醒リズムは,光刺激によって24時間周期に合わせることができないため,昼夜リズムから徐々にずれることがある.視覚健常者に非24時間睡眠覚醒症候群が発症する原因は不明だが,体内時計の生み出す概日リズム周期が24時間より長すぎて昼夜リズムに合わせることができない,体内時計の光刺激に対する感受性が低下している(または亢進している),光刺激に対して感受性のある時間帯が睡眠中に現れるため,覚醒時に光刺激を受けても睡眠覚醒リズムの位相が前進しない(入眠・覚醒時刻が早まらない),などの機序が想定さ

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