診療支援
治療

てんかんの基本的な治療姿勢
therapeutic attitude to treatment of epilepsy
兼本浩祐
(愛知医科大学教授・精神医学)

◆疾患概念

【定義】

 てんかん発作は,大脳皮質の過同期によって一過性に出現する症状であり,これは従来から大きな変化はない.これに対しててんかんの定義には最近本質的な変更が加えられている.元来はてんかんとはてんかん発作が反復する慢性の神経学的状態と定義されていたが,2005(平成17)年以降の新しい定義では,てんかん発作を引き起こす持続する病態と,その神経生物学的,認知的,心理的,社会的影響によって形成される病態からなる脳疾患と定義され,少なくとも1回のてんかん発作の出現を条件とするとされている.若干わかり難い定義なので図示したが(図1),従来の定義がてんかんを単純にてんかん発作の集合体としてとらえていたのに対して,新たな定義ではてんかん発作を発生させる脳の機構が,てんかん発作を通して,あるいはてんかん発作とは独立に引き起こすさまざまの障害を総括しててんかんとよぶことになっており,てんかんをより深く包括的に理解しうる枠組みを提供している.

 最近のてんかんの定義の改定に際して現実的に最も重要なのは,従来24時間以上を開けて2回以上のてんかん発作があるものをてんかんと定義していたのが,1回のてんかん発作でも2回目が起こる確率が6割以上であればてんかんとよぶことになった点である.より具体的にいうならば,脳波上のてんかん波,中枢神経系の疾患の既往歴ないしは脳画像における病巣の存在が確認された場合には,2回目の発作が出現する確率はおおよそ6割を超えることになるので,てんかんの操作的定義に当てはまることになる.こうしたリスクファクターがない場合1回目のてんかん発作は治療しても治療しなくても発作が再来する確率は減少しないことが示唆されていることもこうした低リスク群をてんかんから除外した根拠の1つである.

 ただしたとえば低ナトリウム血症や頭部外傷後1週間以内に出現する早期発作など誘発されて起

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