診療支援
治療

ウェスト症候群
West syndrome
前垣義弘
(鳥取大学教授・脳神経小児科学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 ウェスト症候群とは,群発するスパズムと脳波でヒプスアリスミアを呈し,しばしば精神運動発達の停止・退行をきたすてんかん性脳症である.

【病態・病因】

 周産期脳障害や結節性硬化症,染色体異常(ダウン症候群など),先天代謝異常などの基礎疾患をもつ場合が多い(症候性ウェスト症候群).発症までの発達が正常で,周産期歴・既往歴や諸検査で基礎疾患が特定されず,他の発作型がない場合は潜因性ウェスト症候群に分類され,症候性に比べ予後はよい.

【疫学】

 出生1,000に対して,0.16-0.42とされる.小児てんかんに占める割合は約5%である.

【症状】

 発症年齢のピークは3-7か月であり,大部分は1歳までに発症する.急激に頭部を前屈し,両上肢を屈曲挙上するスパズムとよばれる発作が,5-30秒ごとに規則的に数分から30分間にわたり反復する.寝起きに起こることが多い.発症後は,不機嫌となり次第に発達が停止・退行する.

【経過・予後】

 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の短期的効果は50-80%であるが,半数近くは再発する.近年は,レンノックス-ガストー症候群()への進展はまれで,スパズムが長期間続く例が比較的多い.知能予後は不良で潜因性の一部を除けば,大多数で知能障害や運動麻痺が残る.予後は基礎疾患に依存している.

◆診断のポイント

 乳児が頭部や四肢をピクつかせるという訴えの場合には,脳波を確認すべきである.初期に脳波異常を認めない場合でも1-2週間後に再検したほうがよい.また,不機嫌や発達停止を主訴に来院した場合にもウェスト症候群を念頭におくべきである.頭部画像や染色体検査,血液・尿・髄液での代謝スクリーニング検査などによる基礎疾患の診断が重要である.

 脳波所見は高振幅徐波と鋭波・棘波が非同期性に無秩序に持続するヒプスアリスミアとよばれる特徴的な脳波像を発作間欠期に呈する.この

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?