診療支援
治療

心因性非てんかん性発作
psychogenic nonepileptic seizure
伊藤ますみ
(上善神経医院・院長(北海道))

◆疾患概念

【定義】

 心因性非てんかん性発作psychogenic nonepileptic seizure(PNES)は「突発的に生じるてんかん発作に類似した種々の身体症状であるが,身体的生理学的発症機序をもたないもの」と定義される.真のてんかん発作に合併する例もある.発症高リスク群として,女性,知的障害,若年層が挙げられる.

【臨床症状】

 PNESは緩徐に始まり,徐々に消退する.長時間持続し,その間多彩な症状が時間や周囲の状況とともに変化する.頭部の横振り,全身の突っ張りや後弓半張,手足の細かいふるえまたは間代けいれん様の屈伸,身もだえや腰ふりなど不規則な運動を呈する.刺激に反応せず意識障害と思わせることがある.睡眠中には起こらない.咬舌,失禁,発作時受傷は起こりうる.

◆診断のポイント

 確定診断は発作時脳波所見にて,てんかん性異常放電を認めないことによる.しかし,一部のてんかん発作では脳波変化が生じないことがあり,発作波が認められなくてもPNESと断定することはできない.臨床症状,ビデオ脳波同時記録,治療反応性,背景にある心理社会的要因などから総合的に診断する.心理的機制として,元来の性格傾向(依存的,自己中心的),生育歴,周囲への不適応やそれに伴う不安,疾病利得が考えられる.

◆治療方針

A.薬物療法

 てんかんにPNESが合併している例は,すでに複数の抗てんかん薬を服用している.そのうえ,PNESを発作増悪ととらえられ,抗てんかん薬が大量投与されていることが多いため,減薬や処方の単純化を試みる.この間に離脱発作や,真のてんかん発作が生じる可能性もあるが,前もって患者と家族に説明したうえで,すぐに抗てんかん薬を増量せずに一定の観察期間をおいて判断する.てんかん合併の有無にかかわらず,併存する精神症状や情動不安定に対し,向精神薬を適宜使用する.この際,副作用により,認知機能が低下

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