診療支援
治療

鎮痛薬,鎮咳薬依存
analgesic/antitussive dependence
荒井 稔
(東京臨海病院・精神科部長/同院健康医学センター長)
大熊智子
(東京臨海病院・薬剤科科長)

◆入手経路による分類

 鎮痛薬および鎮咳薬の依存については,大きく医師によって投与される薬剤によるものと,一般市販薬によって生じる場合の2種類がある.前者については,処方医の責任のもとに管理される必要があり,後者については,症状に対応した薬剤師の購入支援が適正であることが必須である.

◆依存によって出現する症状群

A.薬物依存

 薬物に耐性が生じ,長期間にわたる大量の薬物摂取によって,その薬剤の薬理学的作用のために,急性中毒や精神症状が発生し,薬物の摂取の中断によって離脱症候群が発現するため日常生活・社会生活に支障がみられることをいう.

B.薬物乱用

 薬剤の反復的な使用の結果として,日常生活・社会生活に支障が出たり,危険な状況下で服薬したり,法的な問題が生じたり,対人関係障害などが生じる場合をいう.

C.物質離脱

 一定の薬剤の長期間,大量摂取が持続したのちに,摂取中断後に当該薬物に特徴的な精神・身体症状が現れ,生活に相当程度の支障が出ることをいう.

D.せん妄

 アルコール依存症の場合が臨床的には多いが,理論的には鎮痛薬,鎮咳薬の依存経過中に生じることもある.主症状は,不眠,振戦,恐怖,意識混濁・錯乱,幻覚・妄想,激越・焦燥感,睡眠障害,自律神経系の壊乱などである.

E.精神病性障害

 薬剤の使用時・使用後に生じる幻覚,妄想,精神運動性不穏あるいは昏迷,激しい感情の変化および軽度の意識混濁に伴う認知機能障害が現れる.

F.健忘症候群

 短期記憶障害が慢性的で顕著な症候群である.即時の記憶想起障害は認められず,意識障害もないのが通常である.

G.残遺性障害および遅発性精神病性障害

 認知,感情,人格,行動などにおいて,当該薬物の摂取中止後にも,長期間にわたって,それぞれの領域での障害が一定期間認められる場合である.短期間のフラッシュバック,動作・思考の緩慢さ,礼節が保たれないこと,通常の気分障害からは区

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