診療支援
治療

覚醒剤依存,メチルフェニデート(リタリン)依存症
amphetamine/methamphetamine dependence syndrome, methylphenidate (Ritalin) dependence syndrome
成瀬暢也
(埼玉県立精神医療センター・副病院長)

◆疾患概念

【定義】

 覚醒剤,リタリンの使用に関するコントロール障害であり,ICD-10では,強い欲望,コントロール障害,離脱症状,耐性形成,物質使用中心の生活,有害な結果が起きても使用,の6項目中3項目以上を1年間に満たせば依存症であるとしている.

A.覚醒剤およびリタリンとは

 覚醒剤は,覚醒剤取締法で規制された物質の総称であるが,ほとんどがメタンフェタミンである.精神依存と精神病状態を高頻度に惹起する依存性薬物であり,わが国の精神科臨床において最も重要な薬物である.覚醒剤患者は,精神科医療機関を受診する薬物関連患者の過半数を占め,中毒性精神病で精神科救急に登場することも多い.経静脈的あるいは吸煙(あぶり)で使用される.

 リタリンは,メチルフェニデートを含む医薬品であり,適応症はナルコレプシーのみである.経口中枢神経刺激薬であり薬理作用は覚醒剤に類似する.乱用問題が指摘され,2007年にうつ病の適応を削除,流通規制が実施された.

【病態】

A.薬物誘発性障害

1.覚醒剤

a.急性中毒

 中枢神経系興奮作用,交感神経刺激作用がある.

①精神身体症状

・精神症状:精神運動興奮,気分発揚,多幸感,万能感,多弁,過覚醒,不安,焦燥,知覚過敏,錯覚,パレイドリア,要素性幻聴など

・身体症状:不眠,食欲減退,頻脈,瞳孔散大,血圧上昇,発汗,四肢冷感,嘔吐,口渇,腱反射亢進,振戦,けいれんなど

②急性症候群:恐怖不安反応,幻覚,せん妄,急性錯乱など意識障害を伴うことが多い.包囲襲撃状況を訴え,切迫した不穏状態を呈する.

③反跳現象:嗜眠,疲労,無欲,過食,抑うつなど

b.慢性中毒

①覚醒剤精神病

 覚醒剤には催幻覚妄想作用がある.妄想は関係妄想を中心に被害・追跡・注察・嫉妬妄想などからなり,幻覚は幻聴が主である.幻覚や妄想の内容は実際の生活や覚醒剤使用に関連した状況反応性のことが多い.使用直後を除けば,病的体験

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