診療支援
治療

大麻依存
cannabis dependence
松本俊彦
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・薬物依存研究部部長)

◆疾患概念

【定義・病型】

 大麻依存とは,大麻を繰り返し摂取しているうちに,当初に比べて,期待する効果を得るのに必要な大麻の量が増えたり(耐性獲得),大麻に没頭するあまり仕事や趣味が犠牲になる,もしくは大麻のことを考えて過ごす時間が長くなったり(精神依存),あるいは減薬や断薬を試みても失敗したりして(コントロール喪失),学業や職業的活動,日常生活に支障をきたした状態を指す.

【病態・病因】

 大麻とは,インド産大麻という植物に含まれる活性成分Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)を含むものを総称した名称であり,大麻を経気道的に摂取した結果,このΔ9-THCが内因性カンナビノイド受容体に結合することで多幸感をもたらす.

 大麻は,Δ9-THCを摂取する方法によって通称名が異なり,含有されるΔ9-THCの濃度も異なる.大麻の葉を乾燥させたもの(通称:「ハッパ」「ガンジャ」「クサ」),大麻樹脂を固めたもの(通称:「チョコ」),植物から樹脂浸出液を抽出したもの(通称:「ハッシシ」)の順にΔ9-THC濃度は高くなる.

 大麻を摂取すると,数分後に多幸感,知覚変容,運動失調,眼球結膜の充血などの効果が発現し,約30分でピークとなり,その後,2-4時間持続する.大麻には身体依存は認められないが,長期乱用者では,使用中止によって不安や焦燥,攻撃性亢進,食欲不振,不眠といった離脱症状を呈し,精神依存や耐性獲得はある.

【疫学】

 15歳以上の地域住民を対象とした調査では,過去1年以内の大麻経験率は,1997年に住民の0.1%であったのが,2009年には0.04%と微減しているように思われる.しかし,大麻取締法による検挙者数も,2000年までは1,500人/年以下であったのが,2008年には2,867人/年と激増しており,精神科医療機関における薬物関連障害患者調査でも,大麻使用経験のある患者の割合

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