◆疾患概念
【定義・病型】
ニコチン摂取(喫煙)に伴う障害があり,禁煙や節煙などを意図してもできない状態をニコチン依存とよぶ.ニコチンに対する強い欲求(心理的依存)を主とする「ニコチン依存」と,ニコチン血中濃度の低下や消失に伴って起こる「ニコチン退薬(離脱)」とがある.喫煙は薬物依存の一型ではあるが,他の薬物依存症の場合と異なり急性中毒などの病態を生じないし退薬症候も限られている.しかし,喫煙と関連する疾患がありながらも禁煙できないのは,依存の強さの反映である.
【病態・病因】
ニコチンの精神作用が依存の主要因である.喫煙すると,ニコチンは肺経路で血中へ移行し,その90%が約7秒という速さで脳へ達する.そして,脳内ニコチン受容体と結合して,ノルアドレナリン,アセチルコリン,βエンドルフィン,ドパミンの遊離を促進する.その結果,覚醒水準や学習などが影響を受ける.その変化は,穏和な調整といったレベ