診療支援
治療

ギャンブル障害
gambling disorder
斎藤 学
(家族機能研究所・代表(東京))

◆疾患概念

【定義・疫学】

 ギャンブル障害とは,賭博(ギャンブル)という行為にとらわれ,有害な影響が明らかであるにもかかわらず,そこから抜け出すことができないという衝動的で強迫的な行為の反復のこと.この種の有害な強迫的・反復的行為は一括して嗜癖addictionとよばれるが,有害性が顕著な賭博行為も「これに類する精神障害」として治療の対象とされるようになった.ギャンブル嗜癖(アディクション)ともよばれる.

 米国での生涯有病率は男性を中心に1.5%(アルコール依存症の1/10程度)とされている.わが国における疫学的資料はまだないが,街にあふれるパチンコホールや自治体が主催する競馬,競輪などの人気を考慮すれば,米国並みの発生率が予測される.仮にアルコール依存症者の1/10とすると実数で8万-10万人程度の治療対象者がいることになる.

 さらに近年ではパソコン,インターネットなどの普及に伴い,これら通信機器を介した射幸性の高いゲームや,複数人がそれぞれの役割をもってネット上で対戦するRPG(ロールプレイングゲーム)などが開発され,世間からひきこもりがちな青少年にとっては魅力的な(時には唯一の)精神活動になっている.いわゆる「自己愛的ひきこもり」とよばれる類いの人々は35歳以下の若年層を中心に40万人程度存在するものと推定されているが,彼らのなかには日夜インターネット・ゲームに浸る「ネトゲ廃人」(彼らの自嘲的な自己定義)もみられる.この種の人々も新種のギャンブル嗜癖と考えると,罹患者の数は一挙に倍増することになる.

【病態】

 ルーレットなどカジノ(賭博社交場)型のゲーム,ポーカーなどカード・ゲームやマージャンなどの自宅型の対戦ゲーム,それに競輪や競馬などの大がかりな行事を対象とした賭けなどが伝統的なギャンブルであるが,これらの多くは社交的なものである.これが賭博者の借金や怠業を招くことに

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