診療支援
治療

心身症総論
outline of psychosomatic diseases
須藤信行
(九州大学大学院教授・心身医学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 心身症とは,“身体疾患の中で,その発症や経過に心理・社会的な因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう.ただし,神経症やうつ病など,他の精神障害に伴う身体症状は除外する”〔日本心身医学会教育研修委員会(編),1991〕と定義されている.このように心身症とは独立した疾患単位を指す言葉ではなく,身体疾患のなかで心身相関が認められる病態をいう.代表的な心身症としては,片頭痛,緊張型頭痛,虚血性心疾患,高血圧,気管支喘息,アトピー性皮膚炎,じん麻疹,過敏性腸症候群などが挙げられる(表1).一般に思春期,青年期には機能的障害の頻度が高く,成人期,初老期,老年期になるにつれて,器質的障害の頻度が増加する傾向がある.一方,小児では大人の場合と異なり,心身が未分化で,全身的な反応を示す場合が多いといわれている.さらに心身症は,現実的なストレス環境に由来するタイプ(現実心身症とよばれることもある)とストレスの受け止め方や対処の仕方など,本人の性格傾向に問題が認められるタイプ(性格心身症)に大別される.心身症に比較的よくみられる性格傾向としてアレキシサイミア(alexithymia:失感情表出症)や過剰適応が挙げられる.

【病態・病因】

A.心身症の特徴

 心身症の病態に共通する特徴として“心身相関”が挙げられる.その理論的背景については後述するが,この心身相関を正しく把握してこそ,心身医学的な診断や治療が可能となる.その具体的目安として,以下の項目などが挙げられる.しかし,同じ心身相関が認められても,その生物学的要因がより強いものから,心理社会的要因が強いものまで,同じ心身症という病態を呈していても,その内容は疾患の種類により,また患者個々により,比重のかかり方は異なる.上に述べたように“性格心身症”と“現実心身症”という概念区分がなされるゆえんで

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