内分泌疾患は精神症状を伴っていることが多い.歴史的には心身症の代表とされたseven holy diseasesにバセドウ病が含まれているように,心身症の病態をとるものが少なくない.本項では,甲状腺疾患を中心に解説し,ほかに内分泌疾患のなかでも注意を要する疾患を簡単に解説する.
甲状腺機能亢進症
◆疾患概念
【定義・病型】
血中に甲状腺ホルモンが増加することにより代謝亢進をきたした状態である.したがって,代謝亢進に伴う種々の身体症状,精神症状が現れる.原因として甲状腺自体の機能亢進によるものと,機能亢進はないが炎症などで甲状腺濾胞細胞が破壊されることで血液中の甲状腺ホルモン値が上昇する破壊性甲状腺中毒症,また甲状腺ホルモンの過剰摂取などがある.また,厳密には甲状腺機能亢進症と甲状腺中毒症は区別されるが,ここでは同一のものとして扱う.
【病態・病因】
甲状腺機能亢進症の原因として最も頻度が高いのがバセドウ病である.甲状腺関連自己抗体が甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌される自己免疫疾患と考えられている.発症に精神的ショックを受けたライフイベントや,日常的いら立ちなどに関連したストレスが関与している場合がある.
日常臨床では大部分がバセドウ病であり,以下,バセドウ病を中心に述べる.
【疫学】
甲状腺機能亢進症で最も頻度が高く,20-30歳代に多い.男女比は1:3-4と女性に多く発症する.
【経過・予後】
バセドウ病では,いらいら感や集中力の低下あるいは神経過敏さなどの精神症状の程度は,甲状腺機能の不安定さに伴って同様に揺れることが多い.しかし甲状腺機能が正常化したあとも多くの患者で心気症状,抑うつ,疲労感など精神症状が残存する例もあり,特に再発群ではこうした精神症状が著明であったと報告されている.これは精神症状が甲状腺中毒症(血中甲状腺ホルモンの過剰状態)のみで説明されない
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