診療支援
治療

皮膚の心身症
psychosomatic diseases of skin
羽白 誠
(はしろクリニック・院長(大阪))

◆疾患概念

【定義・病型】

 皮膚科の心身症に関する明確な定義はないが,皮膚疾患で心理・社会的,精神的要因と関連のあるものを広い意味で皮膚科心身症という.

【病態・病因】

 病態はKooらにより大きく4つに分けられている.

1)狭義の心身症:皮膚症状が心理・社会的要因で寛解増悪するものをいう.アトピー性皮膚炎〔心身症,DSM-5では他の医学的疾患に影響する心理的要因〕や慢性じん麻疹(心身症)などである.

2)一次性精神疾患:精神疾患であるが皮膚に関する症状がみられるものをいう.皮膚寄生虫妄想や抜毛癖(DSM-5では抜毛症),自傷性皮膚炎(皮膚むしり症)などである.精神科的には妄想性障害や強迫性障害などである.

3)二次性精神疾患:皮膚疾患があるために精神疾患を生じているものをいう.アトピー性皮膚炎があるためにうつ状態や不安障害などになる場合をいい,広い意味で適応障害に当たるものである.

4)皮膚粘膜感覚異常症:皮膚や粘膜に病変がないのに感覚の異常を訴えるものである.精神科的には妄想性障害の身体型や身体表現性障害(DSM-5では身体症状症)に当たる.

 これらの4つのうち,1と3は併存することが多く,アトピー性皮膚炎(心身症)でそれによるうつ状態などを呈する症例は多い.

【疫学】

 皮膚科の心身症は疫学的なものはほとんどない.アトピー性皮膚炎で心身症を呈するのは10-30%くらいだと思われる.

【経過・予後】

 狭義の心身症においてはきっかけとなる心理・社会的要因が存在し,その後心身症の病態が持続することが多い.心理・社会的要因が除去されたりとらえ方が変わったりすれば改善する.一次性精神疾患は妄想性障害や強迫性障害などによるものが多いため,経過は長い.二次性精神疾患は皮膚症状が改善すると軽快することが多く,短期的なケースも多い.皮膚粘膜感覚異常症は妄想性障害や身体表現性障害のため経過は長い.

◆診断のポ

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