診療支援
治療

面接への導入(予診)
intake interview
村上伸治
(川崎医科大学講師・精神科学)
青木省三
(川崎医科大学主任教授・精神科学)

 精神疾患の診断においては,各種の臨床検査も大切であるが,まずは面接が重要であることは今も昔も変わりはない.そして,実際の臨床現場においては,正式な医師の診察(面接)の前に,予診(インテーク)が行われることが多い.予診とは,本診察に先立って,来院に至る大まかな現病歴と主訴,既往歴,家族歴,生活歴,アレルギー歴などの基本情報を聴取するものである.上手に聴取された予診は,診察を助けるだけでなく,診断や治療方針にも多くのヒントや示唆を与えてくれる.

◆問診表

 初診の場合,多くの医療機関が本人や家族にまずは「問診表」の記入をお願いしている.この問診表には多くの有益な情報が詰まっていることが多い.例えば,ある若い男性が本人1人で受診した.主訴の欄はミミズが這うような字でひとこと「苦しい」とだけ記載があり,ほかの欄は空白だった.この例の診断は結果的には境界性パーソナリティ障害だった.また,ある例では,主訴の欄には「仕事のストレス」とだけ記載があり,「ほかに困ることは何ですか?」の欄に「眠れない」とあり,最後の「何かほかに付け加えたいことなどがあったらお書きください」の欄に「過食,死にたい」と記載があった.最も重要な訴えが「主訴」となるとは限らない.まずは問診表を熟読して,どんな患者かを連想し,そのうえでどのように予診を行えばよいかを考えたい.受付の事務職員からも本人と家族の様子を聞いておきたい.それは非常に有益な情報である.

◆誰から話を聞くか

 予診の際には,待合室に向かって名前をよんでよび入れることになるが,誰から話を聴くかがまずは重要なこととなる.例えば,言動がおかしい息子を親が連れて来たような場合,親が本人の前で言動がおかしい様子を話すと本人が怒り出しかねないので,親は「親である私が先に話をさせてほしい」と思っていることが多い.一方,本人としては「親が先に入ったら,何を言われるかわか

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