診療支援
治療

面接の方法
psychiatric interview
宮岡 等
(北里大学主任教授・精神科/北里大学東病院・院長)

◆はじめに

 精神科医は面接を専門とし,得意であると周囲から思われがちであるが,意外なほどに医師間の技術差が大きい.最も大きな理由は「患者ごとに病状,性格,環境などに差が大きいから面接も多彩にならざるを得ない」という面を重視して,適切な標準化を怠ってきたせいであろうか.その間に身体科の医師は,患者医師関係を良好にして,診断に必要な情報を効率よく得ようとする医療面接を作りあげた.医療面接の試験を学生や研修医時代に受けた医師は,専門性が高いと誇る経験豊富な精神科医よりも基本的な面接は上手ではないかと感じることも少なくない.

 かつて精神科医の主な診療対象は統合失調症を中心とする精神病性障害であった.一方,近年,一部のうつ病や適応障害と診断されるような非精神病性精神障害が増えた.前者に対する面接に慣れた精神科医はそれが後者にも通じると考えていたが,実際は多くの限界があった.後者を主な対象とする外来診療において,多剤大量処方問題が起こったのは,非薬物療法につながる情報を集める適切な面接を実施できる精神科医が少ないことと関係しているかもしれない.

 このようなことを念頭におきながら,筆者が面接において重要と考えることを述べる.

◆面接で念頭におくべきこと

A.医療面接や日常会話で守るべき原則は重視する

 近年,医学部学生や初期研修医の教育において医療面接が重視されている.「精神科の面接は特殊である」などと考えず,すべての精神科医は,診断と治療,いずれの面接においても,医療面接の基本技法は頭に入れておくべきである.医療面接では,傾聴・受容,共感,closed questionsとopen questionsを適切に組み合わせる,要約を述べる,解釈モデルを尋ねる,患者への説明に難しい医学用語を用いない,などが重視される.統合失調症患者に対する面接から発展してきた精神科面接では傾聴・受容や共感すら軽視

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