診療支援
治療

特別な配慮が必要な患者との接し方
approaching patients with special needs
石川正憲
(目白大学人間学部人間福祉学科教授)

◆定義

 精神科領域における面接は,単に現病歴や既往歴,家族歴,生活歴などの診療情報の聴取や精神科現症を把握するだけでなく,心理療法や精神療法といった治療自体も意味し,さらには治療の詳細な内容や報酬も含めた治療契約の締結をも含んだ幅広い内容を包含している.種々の心理療法や精神療法については他の項目に譲ることとし,この項では特に児童・思春期の患者,興奮している患者,終末期の患者への接し方について解説する.

◆適応

 上記の診療場面では,治療の必要性について本人の了解や選択,同意能力に問題や障害が存在することが多い.このような状況は,入院・外来にとどまらず,精神保健福祉法上の任意入院,医療保護入院などの自発的・非自発的入院にかかわらず生じる.このなかで代諾者(多くは保護者)との話し合い,地域のサポートメンバーとの協議や情報提供が診療上大きな役割をはたす.患者とコミュニケーションをとる際は,言葉遣いや言い回しだけでなく,時には診察環境も配慮する必要がある.

◆各場面別の対応

A.児童・思春期の症例

 児童・思春期への対応は年齢によっても異なるが,概して若年なほど本人との言語的なコミュニケーションは困難で,病状の把握には本人の行動観察と家族の陳述が重要になる.逆に思春期の症例は,言語的なコミュニケーションは成人と同様にとることができるが,思春期の心性ゆえの表出させることの難しさや,両親には伝えていない秘密も多く存在する.このように本人の言語発達や心理的な発達段階を十分に考慮した面接を必要とする.さらに,保護者の不安や心配も受け止めていく.

 病歴や現症を正確に把握するためには,両親を中心とした保護者の陳述に耳を傾ける必要がある.この際にも,両親は「わが子」ならではの思い入れ,先入観があり,時には精神疾患に罹患した子どもへの気持ちから,強い後悔の念をもって,事実と異なる状態の陳述をすることもある.

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