◆定義
精神科領域における診断とは,身体疾患とは異なり,病因が明らかでないものが多く,また客観的なマーカーに乏しいため,問診に依存する部分が大きい.問診によって,診断に有用な精神医学的な情報を得るとともに,必要に応じて神経学的ならびに身体的診察や検査を行って,一定の診断基準に基づいて疾患診断を行う.現在,臨床現場では診断基準として,いわゆる従来診断(伝統的診断)と操作的診断基準(DSM,ICD)が混在しているが,それぞれ一長一短を有している.
従来診断は,クレペリンE.Kraepelinの精神医学書がその基礎をなし,その後ブロイラーE.Bleuler,シュナイダー(K.Schneider)など,主としてドイツ学派によって発展を遂げたものである.わが国では,呉秀三が1901年にドイツからの留学より帰国してわが国の精神医学の礎を築いたため,当然ながらドイツ精神医学の伝統的診断の影響を強く受ける