診療支援
治療

精神症状評価尺度
psychiatric rating scales
稲田俊也
(名古屋大学大学院准教授・精神生物学)

◆定義

 精神症状評価尺度は,統合失調症,気分障害,不安障害,認知症など各種精神障害の重症度の測定,スクリーニング,診断,症状特性の把握,治療効果の判定などを目的として開発されたものであり,大きく分けて被験者自身が質問紙に回答する自己記入式質問票と,評価者が被験者と面接を行って評価を行う評価者面接による評価尺度の2つのタイプがある.

◆適応

 被験者に評価尺度を用いた各種精神症状の重症度評価を行う際には,評価の目的に応じて,適切な精神症状評価尺度を選択することが望まれる.以下の「分類」では,精神障害別に広く用いられている代表的な評価尺度を抜粋して選んでおり,その概要を紹介する.

◆分類

A.統合失調症の症状評価に用いられる評価尺度

1.簡易精神症状評価尺度Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS)

 簡便で包括的な精神症状を評価するために開発され,現在も統合失調症の薬効評価や臨床精神薬理学研究の際などに広く用いられている評価尺度の1つである.開発当初のOverall版(Overall&Gorham,1962)は16項目であったが,これに興奮および見当識障害の2項目が追加された18項目のOverall版やECDEU版が広く使用されている.評価の信頼性を高めるために,具体的なアンカーポイントの設定されたOxford版(Kolakowska,1976)や構造化面接Structured Interview Guide for BPRS(Crippaら,2001)などが開発されている.日本語版は宮田ら(1995)が18項目のOverall版を,また北村ら(1985)がOxford版の信頼性を報告している.

2.陽性・陰性症状評価尺度Positive and Negative Syndrome Scale(PANSS)

 統合失調症の精神状態を全般的に把握する目的で,Kay

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