診療支援
治療

QOL診断
QOL diagnosis
山本暢朋
(榊原病院・精神科診療部長(三重))
稲田俊也
(名古屋大学大学院准教授・精神生物学)

◆定義

 QOL(quality of life)とは,世界保健機関(WHO)によれば「個人が生活する文化や価値観のなかで,目標や期待,基準,関心にかかわる自分自身の人生の状況についての認識」とされている.精神科領域におけるQOLについて,完全なコンセンサスが得られている定義はいまだ存在しないものの,患者の主観的満足度だけでなく,患者の社会的機能や患者を取り巻く環境も,その要因として見なされることが多い.そして,患者の満足度は主観的QOL,社会機能や環境は客観的QOLとよばれている.

◆適応

 QOL診断やその評価は,治療転帰を評価するためのエンド・ポイントとして,近年特に重要視されるようになっている.これは,①医療技術の発展や社会基盤の整備・人口の高齢化に伴い,慢性期の医療サービスに対して関心がもたれるようになったことや,②医療従事者-患者関係が対等に扱われるようになった結果,医療ユーザーの主観的認識を評価・診断する指標が必要になったこと,の2つがその背景として挙げられる.このため,QOL診断や評価は,すべての精神科ユーザーに適応があると考えられる.

◆分類

 QOL診断や評価の枠組みには,①全般的QOL,②健康関連QOL,③障害特異的QOLの3つが存在する.①は一般人口を対象として行われるものであり,例えば人間関係や経済状況といった,QOLを構成しているが,直接健康と関連しない要素を含有していることがある.②は健康に関する項目に限ったQOLであり,疾患やヘルスケアが直接影響を及ぼす要素のみを扱っている.③は特定の疾患やその治療が機能に及ぼす影響につき検討するものである.

 QOL診断やその評価は,標準化された評価尺度を用いて行うことが推奨されており,またさまざまなQOL関連の評価尺度が公表されている.しかし,わが国において,精神障害に関するQOL研究の数はまだ少なく,また精神障害に

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