診療支援
治療

ヘルピングスキルズでベストな結果を導く「SDM診療手順」
a semi-structured interview method for shared decision making in psychiatry
豊嶋良一
(埼玉医科大学かわごえクリニック客員教授)

◆初診面接の6つの課題

 初診で必ずなすべきことは表1の6項目である.初診の限られた時間内でこれらすべてを効率的に成就するには,一定の手順を身につける必要がある.しかし,教科書・手引書でその具体的手順の全体を示したものは皆無といってよい.

 表1の①困っていること・症状・支障のすべて,②解釈モデルと医療への希望・期待を聞き出す過程で,③が自ずと醸成され,同時に精神症状,診立てが浮かんでみえてくる.したがって,①,②は何より真っ先に行うことが推奨される.

◆SDMの効用

 SDMの効用については近年,渡邊衡一郎氏によって薬物選択過程での重要性が唱えられている.さらに本項で勧めたいことは,SDMの適応領域を拡張して,臨床判断のすべてに患者の参与を求めることである.治療法選択のみならず,受診理由把握から解釈モデルの構成,目標設定,結果の評価に至るまでのすべての臨床判断に患者自身も可能な限り参与することによって,患者自身の自己洞察やセルフコーピングまでもが促されることになる.

◆SDMに必要不可欠なヘルピングスキルズhelping skills

 援助過程全体に被援助者自身を参与させる面接技法は,すでに対人援助分野での「ヘルピングスキルズ」として確立している.筆者は20年来,ヘルピングスキルズを用いた診療を心がけ,その有用性を深く実感してきた.しかしこのヘルピングスキルズのことは,わが国の医療分野ではあまり知られていない.

◆SDM診療手順

 そこで,ヘルピングスキルズを用いたSDMで初診の6課題すべてを効率的に成就する「SDM診療手順」を紹介する.表2にその各段階の施行手順と達成目標を掲げた.このSDM診療手順は初診時用のものであるが,再診の節目にも折にふれ用いるとよい.これによってその診療は自ずとベストな方向に導かれるだろう.

参考文献

1) 渡邊衡一郎:うつ病軽症例に対する対応の実際-シン

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