診療支援
治療

脳波検査,脳磁図
electroencephalography, magnetoencephalogram(MEG)
多田真理子
(東京大学大学院・精神医学分野)
荒木 剛
(東京大学大学院特任准教授・ユースメンタルヘルス講座)

◆定義

 脳波electroencephalogram(EEG)は1929年にドイツの精神科医Hans Berger博士により発見された.脳波検査とは,特別に指定されている場合でなければ,頭皮上に装着した電極によってとらえられた脳の電気活動である脳波を脳波計によって増幅し記録することである.特別に指定されている場合とは,例えばてんかん外科手術における皮質脳波や深部脳波などである.

 脳波の発生源は大脳皮質の第Ⅴ層錐体細胞の後シナプス電位postsynaptic potential(PSP)であると考えられているが,きわめて微小な電気活動であるため,頭皮上で計測される脳波は,複数の神経細胞の電気活動の空間的な総和である.脳波計を通して計測される脳波の振幅は正常であれば20-100μV程度である.

 脳波はリズミカルなサイン波の複合として観測されるが,周波数帯域によってデルタ波δwave(4Hz以下),シータ波θwave(4-8Hz),アルファ波αwave(8-13Hz),ベータ波βwave(14-30Hz)に分類される.アルファ波よりも周波数が遅い場合を徐波slow wave,速い場合を速波fast waveとする.健常者では,安静閉眼時に後頭部優位にアルファ波が観察される.このリズムは中脳網様体賦活系の影響を受けた視床の入力によると考えられており,脳波は睡眠研究において中心的な役割をはたしてきた.

 脳波検査は,非侵襲的で,比較的簡便であり,ミリ秒単位の高い時間分解能で神経細胞の電気活動を直接とらえることができるという利点があり,広く臨床応用がなされている.

 脳磁図(MEG)は,脳の電気活動に伴って発生する頭部周囲の磁場を計測したものである.1968年に米国でDavid Cohen博士により発見された.脳磁場は,地磁気の1億分の1程度ときわめて微弱であるため,超高感度の磁気センサー

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