診療支援
治療

神経心理学検査
neuropsychological test
上田敬太
(京都大学医学部附属病院・精神科神経科)

◆定義

 脳の器質的な障害によって生じる症状として,厚生労働省の策定した「高次脳機能障害」の定義では,記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会行動障害が挙げられ,DSM-5によれば,neurocognitive disorderの各症状,すなわち複雑性注意(注意障害),実行機能(遂行機能障害),学習と記憶(記憶の障害),言語(失語),知覚-運動(失認・失行),社会的認知(社会認知障害)が挙げられる.これらの障害について評価を行うために用いるのが,神経心理学検査とよばれる諸々の検査である.また,机上の検査が難しい社会行動障害のような複雑な機能については,日常生活場面などにおける行動評価尺度を用いることが多い.

◆適応

 神経心理学検査では,高次の脳機能についての評価を行う.したがって,より低次の脳機能が障害されている場合には,課題を行うことが難しく,評価の妥当性も低くなる.例えば,意識障害がある場合,注意力の低下をきたし結果として神経心理学検査の成績の低下が生じうる.あるいは,言語障害を有する症例に対して,言語依存的な神経心理学検査を行っても,解釈には慎重を要する.社会行動障害のようなより複雑な障害については,机上の神経心理学検査を行うことは難しく,多くの場合,日常生活についての質問紙などを用い症状を検出することとなる.

◆神経心理学検査の手順

 特定の神経心理学検査を行う前に,患者のバックグラウンドについて把握する必要がある.障害の原因となった疾患についての現病歴はもちろんであるが,矯正歴も含めた利き手,教育歴,さらに社会行動障害や人格変化が問題となる場合は,病前の就業歴を含めた社会適応状態についても聴取する必要がある.

 さらに,検査に入る前に,診察室に入室した際の歩行状態,あるいは椅子に座る際の座り方,および病歴聴取の際などにおけるフリートークの様子などは,これから行うべき神経心理学

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