診療支援
治療

心理検査
psychological test (testing)
津川律子
(日本大学文理学部教授・心理学科)

◆定義

A.心理検査と心理アセスメント

 心理検査を理解するためには,まず心理アセスメントpsychological assessmentという概念を理解することが必要である.アセスメントassessmentという用語は,複数の対人援助職で用いられている.そのなかでも心理学で用いるアセスメントを「心理アセスメント」とよび「心理査定」と訳すこともある.「心理アセスメント」は,かつて心理検査と同義に見なされていた時代もあったが,現在では,①心理検査法,②面接法(アセスメント面接を含む),③観察法(行動観察),という3つの方法を用いて,対象の特徴を収集・解析し,多角的・多層的に総合した結果を提示するという意味になっている.心理検査は,対象の心理的特徴を測定する方法であり,臨床心理学における心理アセスメントのなかの1つとして位置づけられている.

B.信頼性

 心理検査が巷で氾濫している心理占いと一線を画す最大の要因は,信頼性と妥当性の検証が常に求められていることにある.信頼性reliabilityとは,同一の対象に対して同一の条件のもとで同一の検査を繰り返して実施したとき,一貫して同一の得点が得られる程度のことである.しかし,実際には,同一の個人に同じ検査を繰り返して実施すると,再実施までの期間が短ければ1回目の問題を記憶していたり,練習効果が生じたり,再実施までの期間が長ければ,対象の特性そのものが変化してしまっている可能性があるなど,単純に2回実施すれば信頼性が証明されるというものではない.そのため,信頼性を確かめる方法として複数の方法が開発されているが,現在の主流は内的整合性をみる方法で,具体的にはクロンバッハのアルファ係数(Cronbachのα係数)として知られている.しかし,信頼性がどんなに高く担保されていても,妥当性validityが高くなければ,その心理検査は意味が乏しい.そ

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