A.薬物療法における情報の重要性
薬物療法とは,薬物という化学物質を使用して治療を行うことであるから,当然のことながらその薬物に関する必要最小限の知識をもつことが求められる.後述するが,治療行為とは臨床判断の連続であるので,知識はその判断に根拠を与えてくれる.根拠がない臨床判断は単なる賭けになってしまうので,常に結果を予測しながら進められるべき治療行為に知識・情報は不可欠である.しかし,1 つの薬物だけでもその情報は膨大なので,そのなかから治療を行うために重要な情報にアクセスし,選択する技量が医療者には求められるのである.
では,薬物療法を行う際に欠かせない情報とはどのようなものであろうか.臨床試験から得られた添付文書の内容,その他の有効性や安全性に関する情報は基本的なものとして把握しておくべきである.しかし,これだけでは表層的な判断にしか役立たないので,薬物療法を立体的なものへと深化させ