診療支援
治療

抗不安薬
anxiolytics
稲田 健
( 東京女子医科大学講師・神経医学講座)

◆定義

 不安はさまざまな精神障害において認められる非特異的な症状である.原疾患を治療することによって,不安は軽減されるため,抗うつ薬,抗精神病薬にも抗不安効果は認められる.抗不安薬という薬剤分類名は,不安症状を緩和するものから,不安症の治療薬まで,広い範囲の薬剤が含まれるが,主効果を抗不安作用のみとする薬剤を狭義の抗不安薬,抗不安作用および不安症に対する治療効果を有するものを広義の抗不安薬と考えることができる.前者においては,ベンゾジアゼピンbenzodiazepine(BZ)受容体作動薬とセロトニン受容体部分作動薬があり,後者には選択的セロトニン再取り込み阻害薬selective serotonin reuptake inhibitor(SSRI)をはじめとする抗うつ薬が当てはまる.

◆抗不安薬の分類

 抗不安薬として用いられる薬物は,狭義のものとしてBZ受容体作動薬,セロトニン受容体部分作動薬があり,広義に不安症を治療する薬剤として抗うつ薬,適応外であるが抗不安作用を期待して使用される薬として,抗てんかん薬,抗精神病薬,β遮断薬がある.

 不安症治療における各薬剤の特徴を表1にまとめた.

A.BZ受容体作動薬

 GABA(gamma-amino-butyric acid)-BZ-Clイオンチャネル受容体複合体に作動薬として作用する薬剤で,抗不安効果,鎮静・催眠効果,筋弛緩効果などの幅広い効果を示す.同じ作用機序で,抗不安薬(ジアゼパム,ロラゼパム,エチゾラムなど)以外に,睡眠薬(ゾルピデム,トリアゾラムなど)や抗てんかん薬(クロナゼパムなど)に分類されるものもある.

 GABA-BZ-Clイオンチャネル受容体複合体にGABAとBZの両者が結合すると,GABAの作用は増強され,抗不安作用を生じる.このようなアロステリック調節作用を作用機序とするため,BZ受容体作動薬は,過

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