診療支援
治療

抗パーキンソン病薬
antiparkinsonian drug
稲見康司
(西条道前病院(愛媛))
堀口 淳
(島根大学教授・精神医学)

◆定義

 パーキンソン病Parkinson diseaseやパーキンソン症候群parkinsonismでは,線条体内のドパミンが減少するために,ドパミン作動性神経系の機能低下を生じ,同時にアセチルコリン作動性神経系の機能亢進を示すのがその病態と考えられている.抗パーキンソン病薬とは,このような中枢神経系における神経伝達物質の不均衡を是正して,振戦,筋強剛,寡動といったパーキンソン症状を軽減する目的で使用される薬物の総称である.なお,精神科領域では,抗精神病薬の副作用として出現する薬剤性パーキンソン症候群drug-induced parkinsonismや急性ジストニアacute dystonia,アカシジアakathisiaなどの薬原性錐体外路症状drug-induced extrapyramidal symptoms(EPS)を治療するために使われる場合がほとんどである.

◆分類と適応

 抗パーキンソン病薬は,その作用機序,あるいは薬理学的特性によって表1のように分類されている.

 抗パーキンソン病薬の適応となるのは,パーキンソン病および種々の原因によるパーキンソン症候群である.抗パーキンソン病薬は,それぞれ異なる薬理学的特性をもついくつかの薬物の総称であることから,診断名や年齢によって使い分ける必要がある(パーキンソン病の薬物療法についての詳細は,神経内科領域の成書を参考にされたい).

 抗パーキンソン病薬の副作用としては,レボドパ製剤やドパミン作動薬では悪心,嘔吐などの胃腸症状,幻視やせん妄などの精神症状が挙げられ,抗コリン薬では口渇,便秘,認知機能障害,せん妄などがみられることがある.

A.パーキンソン病

 2007(平成19)年度末時点で厚生労働省の特定疾患治療研究事業で登録されているパーキンソン病関連疾患の患者数は92,000人,いずれもHoehn-Yahrの分類でⅢ以上で

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